ワイン専門店マスキュー
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ワインの知識・ワイン辞典

 ドニャ・パウラ マスキュー的考察 

先日アルゼンチンのドニャ・パウラの醸造責任者デヴィット・ボノミさんがマスキューに来てくださいました。著名エノロゴ ステファン・ガンドリーノの後を受け去年から醸造責任者となったとのこと。このおり、ドニャ・パウラの現在の有り様や、目指す方向性など最新の話をしてくださいました。アルゼンチンのワイン生産スタイルを理解する良い機会となりました。

リポートを含めちょっと考察したいと思います。

今や世界第5位のワイン生産国アルゼンチン、その全体の80%がメンドーサ州で造られています。

中でも優良な産地はルハン・デ・クージョ(セントラル)を中心に、ノース、イースト、セントラル、ウコ・ヴァレー、サウスの5つのサブ・ゾーンが設定されています。(セントラルから畑が広がった結果のようですから、まだこの先サブ・ゾーンが広がる可能性が大です。)

ドニャ・パウラもセントラルのウガルテックに畑と醸造所を持ち、南隣のウコ・ヴァレーのトゥプンガトに畑を所有するようになったようです。現在は同じウコ・ヴァレーの南西端アンデス山脈の際にグァルタラリーとサウスのアルタミラに畑を所有しています。なんと総面積704ヘクタールだとか。40名の栽培責任者が分担して管理しています。ちょっと考えられない効率の良さです。

平らな土地に葡萄だけが整然と植えられている畑ですから作業効率が良く、しかも雨は200mlほどしか降りませんからアンデスの豊富な伏流水を集中管理することで潅漑も完璧です。また、基本的に農薬を撒く必要もありませんから余分な手間がかかりません。(場合によってボルドー液等は使うようですが。)冬に堆肥を撒く程度のようです。

また、日照が強いため葡萄樹の仕立てが高く葉を十分繁らせる必要があります。このため畝間も広くとりますから細かな剪定作業も行う必要がないようです。さらに害虫もつきませんから葡萄果は健全にかつ均等に生育しますのでグリーン・ハーベストや摘果摘房の必要もないようです。驚くことに撰果もほとんど必要ないようです。夏場の雹を防ぐネットを張ることと、春先に吹く風速80メートルにも達する(世界3大突風とのこと。)アンデスから吹きおろす突風に備えて針がねや潅漑用ホースを支える支柱を強固にすることくらいが余分な手間のようです。

ただでさえ土地は広いですし、超効率的な管理が可能ですから葡萄栽培地は広がる一方です。「逆にテロワールが無い同じようなつまらないワインが大量に造られる可能性もありますね?」と聞いたところ、畑をボーリングして徹底的に調べると言っていました。

デヴィットさん曰く

「ウガルテックの畑は真っ白な粘土質で保水力がありリッチ。」
「トゥプンガトの畑は砂の下2メートルほどに拳大の礫層がありワインにミネラル分を与える。」
「グァルタラリーの畑は砂の下1〜2メートルのところに石礫と石灰質の粘土の混じった層があります。これが保水力とチョーキーなミネラル分を与える。」
「アルタミラは石礫混じりの砂地ロームも含んでいるようで保水力と養分がある。」
「特にウコ・ヴァレーはセントラルの畑と比べ標高が高く1300メートルあり、寒暖差がより大きく酸のしっかりしたエレガントなスタイルのワインができます。」

広大なアンデスの沖積地で基本的には砂と礫の沖積層ですが、ヴァラエティーがあるようです。特にウコ・ヴァレーにはご執心のようです(笑)。

私「そうするとこれからドニャ・パウラのメインの畑になりそうですね?」

デヴィットさん「メイ・ビー」(どうやら彼は核心をつく質問をするとメイ・ビーと言うようです(笑)。)

ということでした。マスキューに来店して約20分は話通し(笑)。こっちはうなづくのみ(笑)。

そしてロス・カルドスシリーズのソーヴィニヨン・ブランを一緒にテイスティングしました。

デヴィットさん「どうですこのソーヴィニヨン?」

私・家内「旨いなぁ。エレガント!青臭さやオシッコ臭さがない。(通訳の方が困ってましたのでマウス臭と言い直す。)ニュージーランドやフランスとも違う。」

デヴィットさん「健全で完璧な状態で収穫したウコ・ヴァレーのソーヴィニャヨンです。青臭さ、グレープフルーツっぽさがバランス良いのです。ニュージーランドやチリでは海の影響があり暖かく、こうはいきません。」

私「ウコ・ヴァレーは寒暖差があるってことですね。」

家内「こんな綺麗なソーヴィニヨン・ブランは飲んだことがない。」

私「あと、造りにも秘訣があるのでは?ミクロ・オキシダシオンはやりますか?」

デヴィットさん「基本的に白ワインでミクロ・オキシダシオンはやりません。ワインの旨味も取ってしまいます。フリーランの果汁は低温で静置し、セカンド・プレスは低温状態でマクロ・オキシダシオンをします。」

私・家内「マクロ・オキシダシオン?」

デヴィットさん「泡の大きさの違いです。ミクロ・オキシダシオンだとワインの成分まで取りすぎるからです。」

私・家内「それってポンピング・オーバーかピジャージュですか?」

デヴィットさん「メイ・ビー」(またまたでました(笑)。)

デヴィットさんウコ・ヴァレーのソーヴィニヨン・ブランに並々ならぬ情熱を傾けているようです。

私・家内「もっと果汁の濃さがあるエステート・シリーズでソーヴィニヨン・ブランが造られたら凄いですね。」

デヴィットさん「メイ・ビー」(笑)。

どうやらドニャ パウラの目指すのはテロワールの最大化のようです。アルゼンチンの広大で恵まれた葡萄栽培地域でこそ可能。テロワールというとフランスのように最小化を目指す方向性になりがちですが、テロワールという概念自体は人間の考えたものですから、効率と大規模生産はその概念とは矛盾しないのです。

ただ皮肉な話、その作業を阻むとするのはフィロキセラのような自然です。

ドニャ パウラの行き先を注視しなくては!

2012年11月18日
社団法人 日本ソムリエ協会認定 ソムリエ
岡本利秋

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