ワインの知識・ワイン辞典
ペンフォールズ・グランジ・ハーミタージ1990年を飲みました。友人がオーストラリア旅行のお土産として買って来たものです。ちなみにお値段はなんと85,000円位とのこと。(よく買ったM君!)現地のshopでももう最後の在庫ということで思い切って買ったそうです。オーストラリアワインを世界的に有名にした記念碑的ワインを飲めるなんて夢のようでした。ラッキー。 ワインは光を通さない程濃い黒紫の色調です。17年の時間の経過は全く伺えません。ジャムのようなブラックカシスなどの黒い果実が途方もなく凝縮しており、ペッパー、甘草、ヴィニア香などが果実味と同じレベルで溶け合った、とんでもない力のある味わいでした。トロとした濃厚な甘い舌ざわりは美しさの極致と言えます。飲んだ後の余韻が長く続く程です。複雑味と透明感とボリュームのすべてがケタ違いの大きさです。ワイン自体は落ち着いており、まだまだ後20年くらいはもつような若い力があります。ただ一つ疑問に思ったことは、「このワインは基本的に変わらないんじゃないか?」ということです。極端な話「いつまで経っても、人間に例えれば25才位の印象のままじゃないのか?」ということです。時間を経て枯れていきながら、余分なものがそぎ落ちた味わい深い味にはならないのじゃないか?ということです。時間の経過とともにやせてゆき、残った酸と果実由来のタンニンが味わいの中心となるスタイルではないのでしょう。いわゆるフランスやイタリアワインに見られる「熟成」とは違ったものなのでしょう。とんでもないレベルのエキス分を凝縮したスタイルのワインと言えます。(もちろんその為には途方もない努力がなされたはずです。徹底的な選果、極端な低収量、最良のブドウ果実の選定などは旧来フランスやイタリアなどの比ではない位のレベルで行われたはずです。著名なワイン評論家ロバート パーカーJRがその著書『世界の極上ワイン』の中で以下のように語っております。 『多くがワイナリー(特に新世界の)は自称「熟成能力がある」ワインを生産しているが−−−中略−−−本当は「生き延びる能力がある」というべきだ。』 従来ヨーロッパのワイン界で珍重されてきた「熟成」という概念だけではなく、新世界でつくられるエキス分を飲ますスタイル「長命」という概念が肩を並べたことを述べています。酸がない弱点を克服する程の濃い果実味が、ワイン界のスタンダードになってきたということなのでしょう。実際フランスでは、1980年代と2000年代の単位面積あたりの収穫量を比べると倍近い差があることが暗黙の事実となっています。何万円もするグランヴァンですらそんな薄いワインを平気でつくって売ってきた訳ですから、果実味たっぷりの安価なワインが流行するのももっともな話です。ただフランス ワインがすごいのは、内から新世界のような生産者が多数出てくることと、ブランヴァン自体が方向を変え品質を重視(低収量に生産を抑える)する方向へ向かって巻き返しを図っていることです。環境に無理しないワインづくりができる点において、フランスは基本的に勝っている訳ですから、名もない生産地・生産者がとんでもない怪物ワインをつくり出す可能性が最も高い訳です。選ぶ側としては楽しみが増えることになります。名前にとらわれずに美味しいワインを探し続けたい。これがマスキューのよろこびです。 岡本 利秋 >> ワインの知識トップへ |
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