ワイン専門店マスキュー
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ワインの知識・ワイン辞典

良いワインの条件 : その1

いいワインは畑仕事で80〜90%決まると言われています。畑仕事といっても様々多々ありますが、低収量を行うこと!例えば1haの畑からワインを5,000本つくるのと10,000本つくるのとではおのずと出来上がったワインの濃さが違うこととなります。

逆の見方をすれば1haの畑から10,000本のワインを生産する畑が2つあるとします。但し片方の畑はブドウの樹が5,000本、もう片方が10,000本ブドウの樹が植えられています。当然10,000本のブドウの樹を植樹している畑からできるワインの方が濃くなります。1ha(100m×100m)の畑に何本植樹され何本のワインが生産されるのかが重要な問題となります。

一般にブルゴーニュの特級クラスの畑では1haに10,000本位のブドウの樹が植樹されます。一級・並級クラスですと5,000本から7,000本位の植密度となります。

1m間隔に植樹された畝が100mあるとします。畝が1m間隔に100本あれば100×100=10,000本、1ha/10,000本の植密度となる訳です。畝同士の間隔が1.5mあるとすれば100×100/1.5=666.6...1haあたり6666本位の植密度になる訳です。更に畝同士の間隔が2mあるとすれば1haあたり5,000本位の植密度となる訳です。ブドウの樹同士の植樹間隔が狭まるほど樹同士の競争が激しくなりより濃くておいしいワインが出来る訳です。葉はより光を求め上へ伸び、根はより地中深くへと張られ土中のミネラル分を多くすい上げるようになります。原理としてはこのような訳なのですが実際には生産性、地域性の問題がある為、植密度は様々な形となります。

畝間が1mですとトラクターなどの機械を畑に入れることが出来ません。それで全てが手作業となり大変なコストがかかります。畝間が1.5mですと畝上のトラクターがまたぐように走れますので薬品散布などで機械化、省力化ができます。畝間2mあると畝の間を軽車両が通ることが出来かなりの部分が機械化できます。畝間が3mあるともうかなり大型の車両が通行可能となりますから作業効率は飛躍的に向上します。これがワインの値段に反映される訳です。

大概はこの原理なのですが、収量が低ければ低いほど良い訳ではありません。例えばロマネコンティですが1haあたり10,000本のブドウの樹が植樹されてその面積は1.5haに満たない程です。長年ロマネコンティをつくり続けてきた日本人の栗田さんがおっしゃっていたのですが「この畑はワインが10,000本位できた年が最も調子がいいんです。5,000本しか出来なかったり13,000本できたりした年より10,000本位の出来の年の方がいいワインができるのです。

土地の力を最大限引き出す為にはその土地最適な植密度があるようです。スペインなどでは地中の水分が極端に少ない為ブドウ樹を3m間隔くらいに離すことでバランスが取れるようです。乾燥した気候ですので下草もほとんど生えませんから農作業はフランスに比べると楽なようです。(ちなみに乾燥農法といいます。)ですからフランス、イタリアに次ぐ第3のワイン生産国なのですが、栽培面積はフランス、イタリアをしのぎ第1位となってしまいます。

作業効率と生産性を第1に考える新世界では1haあたり2,000〜3,000本位の植密度が普通のようです。

逆に極端な生産者は1haに50,000本も植樹する人もいます。(一部のいわゆるビオデナミ※信奉者)50cm感覚でも40,000本にしかなりませんからどうやって農作業しているのか想像がつきません。

また畑で春に「芽かき」することでブドウの房目を制限したり6月頃に摘房すること(グリーンハーベスト)により房数を減らす、などの方法で収量を制限することがあります。

よくワインのラベルに書かれている「ヴィエユ ヴィーニュ」ですが、いわゆる「古木」のことで、古木ゆえ粒、房の大きさが小さくなります。自然に低収量になりますので、「ヴィエユ ヴィーニュ」がうたい文句となるのです。古木で樹勢が弱くなったことがワインにとっては有利に働く訳です。

いずれにせよワインは農産物であると同時に商品作物でもある訳ですからその地域性や品質、値段に大きな属性を持ちます。収穫量の多寡はコストの問題となっているのです。

但しその現実の間で生産者の中には夢を持ち、信念を持ち、プライドをもって殻を破る人たちもいます。

そんな人々のワインを発見することがマスキューのよろこびとなります。

社団法人 日本ソムリエ協会認定 ソムリエ
岡本 利秋

※ビオデナミとは自然農法の一種。月の満ち欠けや地球上の自然エネルギーなどを利用したり、神秘的で独自の調剤を散布したりする。

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