ヴィーニャ・サンソ 『ソーブレ・リアス』研究 - 樽材使用の一考察ようやく謎が解けました! マスキューの定番として異彩を放つスペインの白ワイン、『ソーブレ・リアス』。若い頃はブルゴーニュのムルソーのようですが、熟成すると緑茶、お香、松茸の香りがする不思議なワインです。 マスキューをお訪ねねくださった当主のハビエルさんと店主夫婦 ずっと不思議で引っ掛かっていました(笑)。 ホームページの販売欄の記述では、 『今年の1月の試飲会で2008年と2011年を比べましたが、深淵な熟成能力にビックリしました。2008年に松茸の香りが! このワイン、入念なシュール・リーをすることで旨味が増し、更に時間を経て旨味が明瞭になる特徴があります。 なかなかお目にかかれないグレート・ワインなのです(笑)。』 『このワイン、ルエダのセラード村にある2.76ヘクタールのフィロキセラの被害を免れた樹齢100年以上の単一畑『ロスポブレ』の葡萄で造られます。 そして造り方がユニーク。まずステンレスタンクにて野性酵母でアルコール発酵し、一旦ワインと澱を分離します。そして500リットルくらいのフレンチオークの新樽にワインと澱の上部を半分ずつ入れます。そして毎日のようにワインを観察しながらバートナージュ(撹拌)し、一年間熟成させます。 当主のハビエルさんがマスキューに来店した時(写真)に熱く語ってくれました。 私「SO2はいつ添加しますか?」 ハビエルさん「最後の瓶詰めの時だけです。」 私「えー!凄い管理能力ですね。信じられません。」 ハビエルさん「ですから毎日私が樽のバートナージュしながら変化がないか注意しています。(笑)。」 私「ところでこれほどまでにシュール・リーにこだわる理由は何故ですか?」 ハビエルさん「シュール・リーをすることにより酵母の細胞膜が壊れます。その結果プロ・サッカリンとタンパク質が中から出てきます。」 私「それは味わいにどんな作用をしますか?」 ハビエルさん「甘く感じます。複雑さに繋がります。」 私「それってアミノ酸系の甘く感じる酸ですよね。シャンパーニュやクレマンなどで稀に現れる赤い果実の甘味ですよね?」 ハビエルさん「そう。それ(笑)。」 はぁ。瓶内発酵・熟成すると稀に現れるレアな酸です。でもスティルワインでは私はまだ出会ったことはありません。野心的な試みです! 実はこのワイン、マスキューには6月には届いていました。しかし、ハビエルさん曰くの本来の味わいが出ていませんでした。良さは解るのですが、まだ何かが出ていない状態だったのです。 このためホームページでは紹介しませんでした。ここにきて、満を持してのデビューです。 とても良いですよ(笑)。 とにかく滋味深い。広がり余韻の美しさは言葉を失います。ルエダのヴェルデホと言えば緻密なフレッシュネス。グレープフルーツなどの柑橘類の溢れんばかりの香りが身上です。それが深い上品さを備えたグレートワインに変身した感じです。 心揺さぶる記憶に残るワインなのです。』 あとブログでは 『 私は今、松茸捜しに夢中です(笑)。 もちろん本物の松茸を捜しに山を徘徊している訳ではありません。 松茸の香り捜しです。 先月の試飲会で『ソーブレ・リアス2008年』に松茸の香りを発見してから気になって気になって仕方ありません。どう気になるかと言うと、あの香りの由来です。これを知るヒントは他の食品などに似た香りを捜すことです。熟成由来なのか?植物由来なのか?葡萄果由来なのか?(多分これは無いかと。) まず、一昨日一つ見つけました! あと今朝もう一つ見つけました! などとあります。 簡単にまとめると、 新樽シュール・リーすることにより旨味・甘み成分のプロ・サッカリン(アミノ酸系のグルタミン酸など)が生まれ、それが緑茶や香木、松茸の香りとなる。と理解していました。 ただし、他の白ワインではあの松茸の香りには出会わないのが、気になりました。 通常新樽熟成したワインに共通した味わいではないのです。
ところでマスキューでは毎年暮れに日本酒の新酒を4斗樽で仕入れ1升瓶に詰めます。去年の暮れに詰めた際は、少し例年より軽めのつけ具合でした。杉の香りにトロピカルなフルーツのニュアンス。あと緑茶や出し汁の旨味のニュアンスがありました。ほのかに松茸っぽくも感じました。 直感的に『ソーブレ・リアス』の味わいを思い出しました。もちろん『ソーブレ・リアス』ほど明瞭ではありませんが。 ひょっとしたら杉の4斗樽のように樽の内側をローストしないことで緑茶や松茸の香りが引き出されたのでは?『ソーブレ・リアス』をシュール・リーする新樽は内側をローストしていないかも?杉の4斗樽は樫材とは香りのニュアンスは違いますが、生木独特の青さがあります。 先日またしつこく(笑)インポーターさんに聞いたところ、やはり樽の内側をローストしないとのことでした! ようやく氷解しました(笑)!基本的にワイン熟成に使う木樽は内側をローストします。生木のままの樽を使うことはまずありません。ですから他の白ワインを飲んでも、『ソーブレ・リアス』のように顕著な『松茸の香りや緑茶の香り』に出会わない訳です。また同時に、『ソーブレ・リアス』の樽香はロースト香をほとんど感じない品の良さがあります。 このいわゆるロウ・カスクの使用は日本のワインに是非応用してもらいたいものです。日本人のD.N.A.の琴線にかかるワインが出来るはず! 和食にそのままマリアージュする白ワインが出来るかも? 私の個人的な意見なのですが、今和食に一番マリアージュするワインは『ソーブレ・リアス』だと思っています。 ソムリエ 岡本利秋 |
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